変性意識入門・催眠編 苫米地英人

Sora・Keikoさんのヒプノセラピー(退行催眠)を受ける前に催眠への先入観を少しでも払拭したいと思って手に取った一冊。
催眠に対する誤解が解けます。怖くないし、だれでもかかります。

最初に言っておきますが、催眠に〝かかりやすい人〟というのは確かにいます。しかし、〝かからない人〟というのはいません。人間ならば誰でも催眠にかかります。短時間で済むのか、数時間かかってしまうのか、その違いがあるだけです。 ごくまれに何時間かけてもかからない人もいますが、それは、その時のタイミングや環境、術者の腕前などが関係しているだけで、催眠そのものにかからない人はいません。人間は必ず催眠にかかるのです。

しかし、なぜ、多くの人が催眠にはかからない人がいると思い込んでしまっているのでしょうか?その大きな原因となる、ある著名人がいます。その著名人とはジークムント・フロイトです。フロイトといえば、精神分析の巨人であり、無意識を最初に研究した人として有名です。彼はジャン・マルタン・シャルコーという有名な催眠術師兼医師の弟子になって催眠を学び、臨床に使っていましたが、わりと早い段階で、「催眠術には効く患者と効かない患者がいる。人によって効果にバラつきがあるものは治療には使えない」として排除してしまったのです

催眠術は術者の腕もありますが、同時に被催眠者側の準備も重要なのです。 なぜなら、催眠とは自分で自分にかけるものだからです。言葉を変えればすべての催眠は自己催眠なのです。催眠術者の腕前とは、他人を催眠に陥れる技術のことをいうのではなく、被催眠者をリラックスさせて自ら催眠を受け入れる準備が整うように導くこと。これが催眠術者の腕前なのです。

催眠関係の書籍を見ると、催眠とは変性意識状態に導くこと、あるいは変性意識状態そのものだとよく書いてあります。ただし、変性意識状態については、以前は=トランス状態と解釈していました。しかし、現在では、酩酊状態や恍惚状態でなくても人は変性意識に入ることが確認されています。

変性意識状態の定義は酩酊状態であるとか、そういったことではなく、人間の意識が物理空間ではないところに臨場感を持った瞬間から始まるのです。ですから音楽を聴いている時はもちろん、小説を読んでいる時などでもそうです。ストーリーに夢中になり、ハッとしたり、怒ったり、涙を流している時は、確実に目の前の現実ではなく、あなたの頭の中で構築された想像の世界、つまり情報空間に臨場感を強くもっています。

電車の中で本を読みながら涙が出てしまうのです。止めようと思っても止まらないのです。これが変性意識状態です。

脳にとっては現実世界と情報世界の区別はなく、臨場感を感じたほうに機能するだけだったのです。だから、人はいとも簡単に変性意識状態になってしまうのです。

現実世界もまた情報空間だということです。人は重要度によって世界を見、現実を加工しています。目の前の景色をあなたは現実だと思っているでしょうが、それは脳が情報の取捨選択をして、あなたに見せているだけなのです。だから、私たちは他人がつくった仮想現実の世界=催眠世界に簡単に誘われてしまうのです。

催眠状態とは変性意識状態のことをいいます。そして変性意識状態とは情報空間に臨場感を持っている状態です。催眠は情報空間に臨場感を持っているときに暗示を入れることで可能になります。この場合の暗示とは術者側が見せようと思う世界の記述です。

人間は一旦、変性意識状態になってしまうと、誰でもとても素直になってしまうのです。言われたことをそのまま丸ごと受け入れてしまいます。

その理由をわかりやすくいえば被催眠者は、この時、幼児のようになっているということです。どんな動物も幼児の時は親のいうことを聞きます。できる、できないは別にして親の言葉どおりにしようと最大限努力します。なぜなら、そうすることが最も生存の確率を高めるからです。

つまり、術者の言いなりになる理由はただひとつ、動物としての摂理に従っているからです。変性意識状態とは素直な幼児の心で、そこに暗示を入れるから、それを実現させるべく全力で取り組むのです。

だから、潜在能力が発揮されるのです。変性意識状態になっただけで、なぜあんなに言うことを聞いてしまうのか、の答えは簡単で、変性意識状態とはそもそもそういうものだからです。生き残るための最良の方法が「言われたとおりにする」ことだからです。ですから、催眠の勘所は、変性意識状態に入れるか、否か、なのです。

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